Panhard Dyna X

高級車メーカーの主張が、ここにある。
このデザイン、一体誰が考えたのか。特にボンネットまわりは全くユニークだ。この変わった車は、パナールディナX。1947年にパナールという自動車メーカーが世に出した車である。パナールとはあまり聞かない名前かもしれない。では、そのメーカーの話から始めよう。
老舗自動車メーカー、パナール。
パナールは、フランスの会社だ。19世紀に創業し、フランス最初のガソリン自動車を製造した老舗自動車メーカーである。現在は軍用車両を製造するメーカーで乗用車は作っていないが、エンジンを車の前部に置き、ギヤを介して駆動力を後輪に伝えるという現在の自動車の基本的な駆動システムを発明した会社でもある。

1900年型のパナール
前部にエンジンを置き、後輪を駆動させる。現代の自動車の駆動システムの原型でもある。
【The National Archives UK, Public domain, via Wikimedia Commons】
前部にエンジンを置き、後輪を駆動させる。現代の自動車の駆動システムの原型でもある。
【The National Archives UK, Public domain, via Wikimedia Commons】
パナールは、19世紀の終わりから20世紀の初期にかけて、自動車産業の発展に大きく貢献し、数々の自動車レースでも好成績を残した。特に第二次大戦前までは、静かで力強く、しかも美しい車づくりで定評があり、高級車を主力製品としていた。

パナール・ディナミーク
1937年に作られたパナールのセダン。流線型で、前に側窓を配したパノラミックウィンドウタイプである。パナールは、戦前はこうした高級車メーカーとして知られていた。
【Unknown author, Public domain, via Wikimedia Commons】
1937年に作られたパナールのセダン。流線型で、前に側窓を配したパノラミックウィンドウタイプである。パナールは、戦前はこうした高級車メーカーとして知られていた。
【Unknown author, Public domain, via Wikimedia Commons】
ところが、第二次大戦が終わると、パナールの主力製品でもあった高級車は売れなくなってしまった。当然だが、戦争で経済的に疲弊した人々には高級車を買うような余裕は無かったのである。そこで、各自動車メーカーはこぞって小型車の製造を始めた。手軽に手に入れられる自動車が求められたからである。
