この車は、もはや芸術品である。
というわけで、この車は、単なる走るマシンではなく、名工が手がけた工芸品の趣きがある。走らせて、乗って楽しむだけではなく、その機構やスタイルを愛でる車ともなっているのである。その意味でこのデュボネ クセニアは、もはや20世紀の芸術品とも言えるのではないだろうか。
デュボネ クセニアは完成後アンドレ・デュボネが所有していたが、第二次大戦中はナチスドイツの接収を避けるためしばらく隠されていたという話も伝わっている。そして戦後、1960年代になるとフランスのイスパノ スイザ・クラブの会長の所有となり、さらに1990年代にはアメリカ人の手にわたり、2000年代には別の人物に購入されている。
このように所有者が次々に変わってゆくのも、この一台が芸術品であることの証拠とも言えるだろう。確かに数の少ない旧車は高値で取引され、オーナーが変わってゆくものなのだが、それは車の希少性や骨董的な価値から来ている。だが、この車にはそれ以上のものがある。何と言っても世界でたった一台の芸術品なのだ。ダビンチのモナリザやピカソのゲルニカと同じなのである。

ペブルビーチ・コンクール・デレガンスでのデュボネ クセニア
ペブルビーチ・コンクール・デレガンスとは、アメリカのカリフォルニア州で1950年から開催されているクラシックカーのイベントである。各国の著名なコレクターが所有の車を持ち込み、その貴重さ、美しさを競うというもので、写真は2012年に参加した時のものである。デュボネ クセニアは誰もが認める芸術品なのである。
【Alden Jewell, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】
ペブルビーチ・コンクール・デレガンスとは、アメリカのカリフォルニア州で1950年から開催されているクラシックカーのイベントである。各国の著名なコレクターが所有の車を持ち込み、その貴重さ、美しさを競うというもので、写真は2012年に参加した時のものである。デュボネ クセニアは誰もが認める芸術品なのである。
【Alden Jewell, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】