ディブコ デリバリートラック

牛乳配達の車、その歴史を探る。

さて、牛乳配達で使われた車に関してもう少し深く探ってみよう。牛乳の配達事業は19世紀から始まったようであるが、最初は当然自動車ではなく馬車であった。ヨーロッパ、特にイギリスで発達したようであり、ミルクフロートと呼ばれていた。荷台の低い馬車に大きなミルク缶を積んで家庭まで運び、各家庭の容器にミルク缶の牛乳を注いで販売していたようである。

そんなミルクフロートが20世紀に入ると馬車から自動車へと切り替えられる。そして、配達する牛乳も大きなミルク缶から個別のビン牛乳へと代わっていった。

馬車用の2輪のミルクフロート
初期のミルクフロート
馬に繋げて使う2輪のミルクフロートである。低く作られた荷台にミルク缶を乗せて運んだ。イギリスのマイルストーン博物館の所蔵品。
Murgatroyd49, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】
4輪の大型ミルクフロートが街角に
大型のミルクフロート
カナダのモントリールで見られたもの。2頭の馬が引いている。撮影されたのは1942年であり、その頃には現代のバンに似た箱型の車になっている。
Conrad Poirier, Public domain, via Wikimedia Commons】

配達に使用する車は、アメリカのディブコはガソリン自動車だったが、ヨーロッパでは電気自動車が主流で、イギリスには牛乳配達用の電気自動車を製造するメーカーがたくさんあったようだ。

短い距離を走るだけでよく、スピードを出す必要もないということから電気自動車となったのだろうが、実際に1960年代のイギリスでは、バッテリー式の電気自動車の台数が世界で一番多かったという統計がある。その電気自動車のほぼすべてが牛乳配達車だったようである。

このようにヨーロッパ、特にイギリスでは60年代の牛乳配達は電気自動車が主流だったのに対し、アメリカはガソリン車のディブコだったというのは興味深い話である。実はディブコは1926年に創業しているが、その創業のきっかけは、電気自動車からの脱却であった。

街角に停まる牛乳配達の電気自動車
イギリスで見られた牛乳配達用電気自動車
イギリスロンドンのTHルイス社が製造したルイス エレクトラックという電気自動車である。LCS(ロンドン協同組合)の牛乳を配達している。牛乳瓶ケースの並んだカートに車と運転台が付いたといった簡素な作りである。撮影されたのは1969年。
Bob1960evens, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】

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なぜアメリカの牛乳配達はガソリン車なのか?