ディブコ デリバリートラック

立ったままで運転できるのが特長?

この車、配送、それも家庭への配達用に作られた車ということだが、普通のトラックやバンとどこが異なるのだろうか。アクセルやブレーキがハンドルの近くに付いており、立ったまま運転ができるという大きな特長がある。牛乳配達のような配達業務をスムーズにこなすためには、この立ったままの運転が重要になってくるのだ。

牛乳配達は、郵便や宅配便とは少し異なる業務である。毎日決まった時間に、同じものをたくさんの家庭に届けなければならないからである。そんな業務で車を使うとなると、動いたり停まったりが多くなる。例えば、通りに並んだ全ての家に牛乳を配達する場合は、車を数メートル動かして停めて配達するという同じ作業の繰り返しとなる。

そこで立ったまま運転できる車が便利なわけだ。いちいち座席に座りハンドルを握ってアクセルを踏むなんて、時間もかかるし疲れてしまう。車に乗り込んで立ったままアクセルのレバーを動かすことができれば、次の家にすぐ向かえるのだ。

デリバリートラックのドアの横に配達員が立っている写真
ディブコで牛乳配達
片手に牛乳を持ち、もう一方の手は車に。これがディブコ車の配達スタイルだった。立ったまま車を動かしたのである。
デリバリートラックの運転席の写真
ディブコのインパネ
ハンドルはあってもアクセルやブレーキは見当たらない。ハンドルのすぐ下に付いているレーバーで操作したようである。
F. D. Richards from Clinton, MI, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons】

ディブコのデリバリートラックは、牛乳配達にはとっても便利で、アメリカの多くの牛乳配達の企業に採用されたようである。また、牛乳配達だけではなく、クリーニング店やパン屋、新聞配達などでも大いに使われていた。

今やディブコは、アメリカ人の懐かしアイテム。

しかし、そんなアメリカも現在では 牛乳などの戸別配達は少なく、消費者がお店で商品を購入するという形が普通である。ゆえに、このデリバリートラックは、今ではアメリカの人にとって思い出深い、懐かしい車となっているようだ。

牛乳配達と言えば、日本人にとって懐かしいのは、家の門や玄関に付けられていた木の牛乳箱だが、アメリカ人にとってはディブコのデリバリートラックだそうで、ディブコクラブという会もある。その会のサイトを見ると「ディブコのトラックは、かつては野球や母親のアップルパイと同じくらいアメリカ人の生活の一部だった」と書かれている。相当に思い入れがあるトラックなのである。

Vitamilk Dairy Delivery Truck
ディブコトラックの牛乳配達
Vitamilkという名のアメリカの乳製品会社のディブコデリバリートラックと配送員の写真。50〜60年代の広告用写真からとられたものだろうか。アメリカ人にとって牛乳配達と言えばこのイメージなのである。
Vitamilk Dairy Delivery Truck by aldenjewell, on Flickr

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牛乳配達の車、その歴史を探る。