高級車がどうしてこんな姿になった?
そんな高級車メーカーのドライエが製造したドライエ148Lであるが、このページの最初の写真にあるような姿になっているのはどういうワケなのだろうか。この派手な車は、実は宣伝用の車である。宣伝用と言っても試乗車のことではない。ドライエの宣伝を行うわけでもない。ツール・ド・フランスのキャラバンに参加し、宣伝を行う車なのだ。
ツール・ド・フランスと言えば毎年夏にフランスで行われる自転車のロードレースだ。1903年から開催されている歴史あるレースであり、イベントでもある。
ツール・ド・フランスでは、1930年から、運営費用調達のためスポンサーを募り、レース前に宣伝車を走らせるキャラバンを行うようになる。つまり、レースが始まる前に、沿道に集まった観客に向けてスポンサーが自社の宣伝を行う車を走らせるわけだ。

1936年のツール・ド・フランス
海岸通りを走り抜ける出場選手たち。手前に見えるロバの引くワゴンにはコロンビア・レストランと書いてあるが、これは宣伝キャラバンではなく、観客目当ての屋台だろう。
【Agence Rol, Public domain, via Wikimedia Commons】
海岸通りを走り抜ける出場選手たち。手前に見えるロバの引くワゴンにはコロンビア・レストランと書いてあるが、これは宣伝キャラバンではなく、観客目当ての屋台だろう。
【Agence Rol, Public domain, via Wikimedia Commons】

1936年の宣伝キャラバン
これも1936年のツール・ド・フランスで撮られた1コマ。この頃にはすでに宣伝キャラバンが始まっていた。トラックやバンが飾り付けられているのがわかる。
【Agence Rol, Public domain, via Wikimedia Commons】
これも1936年のツール・ド・フランスで撮られた1コマ。この頃にはすでに宣伝キャラバンが始まっていた。トラックやバンが飾り付けられているのがわかる。
【Agence Rol, Public domain, via Wikimedia Commons】
このページで取り上げているドライエ車は、1950年のツール・ド・フランス用にドライエ148Lをベースに1949年に製作されたもので、1953年のレースまで使われていたようである。スポンサーとなっているのは、Kleber-Colombesというフランスのタイヤメーカーである。
ボンネットの長い車体をうまく生かしたデザインで、ルーフには四方向に向けて音楽や音声を流せるスピーカーが載せられている。また、バックには大きな窓が付けられていて、スペアタイヤを見せている。これは、スペアと言うよりも自社製品であるタイヤを見せているのだろう。最初にチンドン屋のようなと書いたが、タイヤメーカーのKleber-Colombesを派手な音楽やナレーションで宣伝するのであるから文字通りチンドン屋である。

ドライエ148Lのスタイル
真横から見ると全体的に弓なりになったスタイルだ。こうした曲線を活かした個性的なデザインが、やはり宣伝車たる所以なのである。バックには大きな窓があり、中にタイヤが見えている。
真横から見ると全体的に弓なりになったスタイルだ。こうした曲線を活かした個性的なデザインが、やはり宣伝車たる所以なのである。バックには大きな窓があり、中にタイヤが見えている。

ルーフのデザイン
ルーフの前と左側にスピーカーが付けられているのがわかる。同様に後ろと右側にもスピーカーがある。四方向に向けて音楽や音声が流せるのである。
ルーフの前と左側にスピーカーが付けられているのがわかる。同様に後ろと右側にもスピーカーがある。四方向に向けて音楽や音声が流せるのである。