オープン型観光バスのルーツを探る。
ロカマドゥールで観光用バスの運行は、シトロエン23RUが最初ではない。戦前も同様のバスが走っていた。戦後すぐに作られたこのシトロエン23RUバスは2代目でもある。しかも、横に長い座席を並べた屋根のないバスの運行は、このロカマドゥールの専売特許でもない。1910年代からヨーロッパやアメリカでは、さまざまな観光地でこうしたバスが観光客を乗せて走っていたようである。
さらに時代を遡れば、自動車のない時代にもこうした乗り物が存在した。屋根のないキャビンのついた馬車を使って多くの観光客を運んでいたのである。その馬車は19世紀初頭にフランスで生まれ、フランス語でchar à bancsと呼ばれていた。「ベンチ付き馬車」という意味である。
写真として残っているベンチ付き馬車の様子を見ると、乗客の乗る部分には馬車の車軸と平行にベンチが置かれており、オープン型バスによく似ている。大きなものになると35人から40人の乗客を乗せ、5頭の馬で引いていたようである。

観光馬車の写真
ドイツのドレスデンで見られた観光馬車。御者の後ろにベンチが並んでいて観光客が座っているのがわかる。撮影されたのは1913年ですでに自動車はあったが、観光客を乗せる馬車がまだ普通に使われていたのである。
【Columbus Metropolitan Library, Public domain, via Wikimedia Commons】
ドイツのドレスデンで見られた観光馬車。御者の後ろにベンチが並んでいて観光客が座っているのがわかる。撮影されたのは1913年ですでに自動車はあったが、観光客を乗せる馬車がまだ普通に使われていたのである。
【Columbus Metropolitan Library, Public domain, via Wikimedia Commons】