23RUの観光バス、その正体は。
では、遊園地の乗り物のような23RUのオープン型バスは、いったいどのような経緯で製造されたのだろうか。そしてどのように使われたのだろうか。
まずバスの側面に注目すると、そこには「Rocamadour-Gorges du Tarn」と記されている。訳せば「タルヌからロカマドゥール渓谷まで」といった意味になるが、これはバス会社の名前である。運行する地域の名称をそのまま名前にしているのである。
日本にもその昔、草軽電気鉄道という名前の鉄道会社があったが、草津から軽井沢までの路線を運行する鉄道会社であった。草津から軽井沢だから「草軽」、それと同じである。

側面の文字に注目
Rocamadour-Gorges du Tarnと記されている。このバスを運行している会社の名前である。
Rocamadour-Gorges du Tarnと記されている。このバスを運行している会社の名前である。
そして、この変わった形のオープン型バスは、Rocamadour-Gorges du Tarnバス会社が第二次世界大戦後すぐの1947年にメーカーに注文して作らせたバスだ。戦後の観光需要を当て込んで導入したもののようである。
ロカマドゥールはフランスの南西部にある小さな村で、深い谷に沿って中世の建物が並ぶ美しい場所である。黒い聖母像がある教会も有名で、現在でも年間150万人の観光客が訪れる。バス会社は、シトロエン23RUを元にして作られたこのバスに、聖地巡礼の観光客を乗せ、運行したのである。1950年代から1960年代にかけてこのバスは大いに活躍しており、観光客は、このオープン型バスでロカマドゥールの美しい景色を堪能したことだろう。

ロカマドゥールの景色
断崖の斜面に多くの建物が立ち並んでいる。この奇跡的な景色を見るために今も年間150万人が訪れる。
【Dynamosquito from France, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons】
断崖の斜面に多くの建物が立ち並んでいる。この奇跡的な景色を見るために今も年間150万人が訪れる。
【Dynamosquito from France, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons】

ロカマドゥール巡礼
巡礼者たちの様子を描いた19世紀初頭の絵である。ロカマドゥールは、12世紀以来多くの巡礼者を惹きつける聖地でもある。
【Corentin Tauran 46, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】
巡礼者たちの様子を描いた19世紀初頭の絵である。ロカマドゥールは、12世紀以来多くの巡礼者を惹きつける聖地でもある。
【Corentin Tauran 46, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】
