メルセデスベンツ 150

リアエンジン・リアドライブのサラブレッド。

ガソリン自動車が作られるようになった頃、車の駆動方式は多くがRRであった。技術的な問題もあって、駆動させる後輪の近くにエンジンを置いた方が作りやすかったのだ。

それが、技術の発展に伴い前輪の近くにエンジンを置いて後輪を回す方が安定して走ることが分かり、FRつまりフロントエンジン・リアドライブが普通となったという経緯がある。

しかし、1920年代から1930年代にかけて、エンジンをフロントから再びリアに持ってくる試みがなされるようになった。それは当時の流線型車両の流行とも関係があったのだろう。空気抵抗を減らす流線型にするには、前ではなく、後ろにエンジンを積んだ方が都合がよいというわけだ。

後輪の近くで後輪を回すRRは、この後ドイツの国民車とも言われたフォルクスワーゲンビートルやポルシェなどに採用されている。そう言えば、日本の最初の国民車であるスバル360もRRである。

メルセデスベンツ150を紹介する動画
当時の車体やシャーシの写真も見ることができる。

しかも、メルセデスベンツ150は、リアエンジンとは言うものの正しくは後輪と座席の間、車体の中央付近にエンジンがあった。いわゆるミッドシップだ。

ミッドシップと言えば、早く、安定して走ることができる車であり、革新的な技術を詰め込んだものでもあった。当時の販売資料の中でも「サラブレッドスポーツカー」とされ、その技術力の高さが強調されていた。また、全体の流線型のフォルムに加え、長く、尖ったテールやスペアタイヤをサイドに取り付けるといった粋なデザインも見事である。

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なぜこの時期にロードスターを出したのか。