1949年型 フォード

やはりフォード。庶民派の車でもあった。

このように1949年型フォードは、戦後型の全く新しい車となったわけだが、決して高級車という扱いではなかった。中流家庭のためのファミリーカー、庶民の車として販売されたのである。

しかし、それこそフォード車であった。フォードの最初のヒットはフォードT型であるが、それは、大量生産による低価格化を実現し、自動車をお金持ちの道楽から一般庶民の道具へと変えた歴史的な車であった。そのフォードT型の流れを継承する第二次大戦後の車だったのである。

ゆえに、そのボディタイプもさまざまで、2ドアセダン、4ドアセダンをはじめ、クーペ、コンバーチブル、ステーションワゴンにクーペユーティリティなどがラインアップされた。なお、クーペユーティリティとは客室の後ろに荷台を備えたタイプで、オーストラリアで主に使用されていたものである。

1949年型フォードの雑誌広告
1949年型フォード クーペユーティリティの広告
発売当時の雑誌広告のようである。キャッチフレーズは、「そう!フォードはまた新たなリーダーを作り上げた!」。あのT型を作ったフォードが新時代の車を作ったのだ、という意気込みが伺える。スタイリングの魅力をはじめ、快適さ、使いやすさなども大いに訴えている。
Andrew Bone from Weymouth, England, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】

まさに、どんな需要にも応えようというフォードの意気込みが伺えるラインアップでもある。この車は人気車となり、1949年には100万台以上の販売を達成する。やはり、戦後型のスタイルが庶民に大いに受けたのだろう。

そしてフォードは、同じ年、アメリカの自動車メーカーのトップの座に返り咲くこととなる。そう、この時期、フォードはトップの自動車メーカーではなかったのだ。戦後の新型として投入した1949年型フォードの登場が、この快挙に大きく貢献していることは言うまでもない。

住宅地のフォードの写真
住宅地に駐車する1949年型フォード
アメリカオハイオ州の住宅地メドウェイパークで、1955年頃に撮影された写真。発売からほぼ5年後の写真だが、アメリカの一般庶民の乗用車として愛用されていたことがわかる。
Columbus Metropolitan Library, Public domain, via Wikimedia Commons】

さらにこのスタイルのフォードは、1950年、1951年とマイナーチェンジを行いながら販売が続けられた。1951年には、特徴あるフロントグリルの弾丸飾りが2つになったデュアルブレッドグリルを導入。個性をより際立たせたのである。

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世界で、そして日本でも人気に。