フロントで、ルノー車の個性を強調。
ラジエターの機構に関する技術的こだわりから、ルノーNNはこんな個性的デザインで製造され続けたのであるが、ルノーとしては、フロントに大きなラジエターグリルが付く車は美しくないという思いもあったのではないだろうか。
この車の生まれた1920年代中盤は、大恐慌前の好景気の時代。庶民の間には大量生産、大量消費の生活様式が定着しはじめた時代でもある。当時、ルノーに競合する国内外のメーカーからは庶民向けの自動車が多く出されていた。

1924年のパリ
ルノーNNが生まれた1924年に、パリの街角で撮られたスナップである。通行料を徴収しているのだろうか、自動車の列ができている。大恐慌前のこの頃、パリはすでに自動車社会であった。
【Agence de presse Meurisse, Public domain, via Wikimedia Commons】
ルノーNNが生まれた1924年に、パリの街角で撮られたスナップである。通行料を徴収しているのだろうか、自動車の列ができている。大恐慌前のこの頃、パリはすでに自動車社会であった。
【Agence de presse Meurisse, Public domain, via Wikimedia Commons】
実際に当時のフランスの新興メーカーであったシトロエンからは5CVという車が登場し、大ヒットしていた。ルノーとしては、これに対抗しなければならなかった。自分たちだけにしかできない車、それもルノーらしい個性ある車を作って売らなければという思いがあったのだ。
そこで、フロントデザインに強い個性のあるルノーNNの登場、というわけである。ラジエターの形式は多少古いかもしれないが、こちらの方が車としては美しいぞというわけである。