メルセデス シンプレックス

35HPをさらに大型に、より高級に。

メルセデス35HPの後継として作られたのが、メルセデスシンプレックスである。35HPの革新的な機構はそのままに、1902年以降さまざまな馬力のシンプレックスが製造された。最終的にエンジンは90馬力にまでアップし、サイズも大型の高級車として人気を得た。

メルセデス シンプレックスの側面と正面
メルセデス シンプレックスのスタイル
重心が低く、大きなラジエターグリルが目立つ。

名前の「シンプレックス」には、操作がシンプルで気持ちよく運転できるという意味が込められている。当時の車としては運転が簡単だったのだ。それだけ特別な技術が無くても運転できる、つまり信頼できる車であったというわけである。

最後のドイツ皇帝であった ヴィルヘルム2世が、自動車展示会でこの車を称賛した。

その時彼はこう言ったという「このエンジンは本当に美しい。でも、それほどシンプルではないね。」名前はシンプレックスだが、シンプルな技術ではなくて、たくさんの工夫が詰まっている素晴らしい車だと言いたかったのだろう。

シンプレックスの実車
メルセデス シンプレックス実車
ドイツ博物館に展示されている1906年型。ラジエターグリルの真ん中にメルセデスのロゴが入っている。
Benutzer:Softeis at de.wikipedia, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】
レースに出場したシンプレックス 当時の写真
レースに出場したシンプレックス
1902年、ニースのラ・テュルビーで行われた山岳レースに出場。重量1000kgを超えるレーシングカー部門で2位となった。
Lost to History – Image is 110 years old., Public domain, via Wikimedia Commons】

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名前の「メルセデス」はどこから?