フィアット ドッピオフェートン24CV

なぜこんな形になったのか?

当時は誰もがオリジナリティにあふれた車を作ることができたそうだが、この独創的なデザインの車はあまり他では見ない。なぜこんな形にしたのだろうか。

後席に有名人を乗せてパレードしたかったのか。自分が運転するので、運転席には雨風が入らないようにして後席は幌でいい、ということだったのか。それとも、自分の娘が運転する車なので、娘の好きなデザインにし、娘の安全を考えしっかりした運転席にしたのか・・・。この車のオーナーについては想像がふくらむ。

いずれにしてもオーナーは、住宅や服を自分の好みで注文するように、車も自分の使いたい状況にあわせて注文したのである。ゆえに費用も時間もかかったに違いない。しかし、自動車はまだお金持ちの贅沢品だったのだから当然といえば当然である。

フィアット24−32HPの動画
ロンドンで行われたクラシックカーイベントで見られたフィアット24-32HP。ベーシックスタイルのランドーレットの走る姿が写っている。

車にこだわりを持つ、そのルーツ。

こんな車を提供していたフィアットも、1930年代中頃からは大衆向けの車を量産し、イタリア最大の自動車会社へと成長する。そして自動車は、次第にお金持ちの贅沢品から大衆の乗り物となってゆくのである。

だが、自分の乗る車にこだわりを持つという車ファンの心理は今でも生きている。しかも、車にこだわりを持つ人は、お金に糸目はつけない場合が多い。

費用がかかっても、製作に時間がかかっても、自分だけの、自分の持ちたい車をオーダーメイドするのである。そんなこだわりのルーツが、まさにこの車、ドッピオフェートン24CVと言えるのではないだろうか。