芸術家一族の中から生まれた自動車メーカー。
ブガッティは、イタリアの技術者エットーレ・ブガッティが1909年に設立した自動車メーカーだ。1940年代まで高級車やレースカーを製造していた。

なお、現在もブガッティという名の車が存在するが、それはドイツのフォルクスワーゲンが1998年に設立したブガッティ・オトモビルが製造している車である。今語っているブガッティとは直接の関係はない。
さて、ブガッティの創業者エットーレ・ブガッティは、イタリアのミラノ出身。祖父が画家、父親は家具、宝飾品のデザイナー、弟は彫刻家という芸術家一族の中で生まれ、育った。

タイプ41のラジエターキャップ
「ダンシング・エレファント(踊る象)」と呼ばれている。エットーレの弟であり彫刻家のレンブラント・ブガッティの作品。
【nemor2 from Stuttgart, Germany, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】
「ダンシング・エレファント(踊る象)」と呼ばれている。エットーレの弟であり彫刻家のレンブラント・ブガッティの作品。
【nemor2 from Stuttgart, Germany, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】
そんなエットーレは、19世紀末から登場した自動車に大きな関心を持ち、10代の頃から自動車設計の仕事に携わっていた。そして、28歳で自分の自動車メーカーを設立するのである。
車の美しさにこだわったブガッティ。
エットーレの設計する自動車は、その性能の高さもさることながら、美しさにこだわるという点で独特であった。例えば、エンジンを収めるボンネットの美しい馬蹄形を崩さないようにするため、最新式のエンジンをあえて搭載しないといったこだわりを見せた。
こうした美への追求の頂点に立つのは、ブガッティタイプ57である。1938年に作られたタイプ57SC クーペ・アトランティークは、彼の長男であるジャン・ブガッティのデザインではあるが、当時世界一美しい自動車と言われ賞賛された。

ブガッティ タイプ57
1936年製のメタリックブルーに塗装されたタイプ57。当時、世界一美しいと賞賛された。アメリカのマリン自動車博物館所蔵の一台である。
【Thesupermat, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】
1936年製のメタリックブルーに塗装されたタイプ57。当時、世界一美しいと賞賛された。アメリカのマリン自動車博物館所蔵の一台である。
【Thesupermat, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】
美へのこだわりは、やはり彼の遺伝子の中に組み込まれていたのだろう。生活を楽しむために、美しい絵画や宝飾品が必要なように、美しい自動車も必要であり、その美しさを楽しむ余裕のある人に最高の自動車を届けたいとの思いが、ブガッティの自動車づくりには見て取れるのである。

ブガッティ タイプ41実車
エットーレ・ブガッティ本人が所有していたタイプ41。2015年パリのレトロモビルショーで展示された時の写真である。
【Thesupermat, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】
エットーレ・ブガッティ本人が所有していたタイプ41。2015年パリのレトロモビルショーで展示された時の写真である。
【Thesupermat, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】
