ビアンキ 20-30CV

自転車製造のノウハウを活用。

老舗の自動車メーカーの歴史をひもとくと、自動車製造を始めるきっかけとなったものが色々で面白い。

最初の市販ガソリン自動車を作ったベンツは、エンジン開発であった。日本のホンダも最初に製造、販売したのはエンジンであった。一方、フランスのプジョーは、刃物や歯車などの製造で培った金属加工技術を生かして自動車製造を始めている。また、日本のトヨタは織機つまり織物機械の製造ノウハウがもとになっている。

そして、ビアンキは自転車である。自転車は、自動車と同様に移動機械であるので、ビアンキの持つノウハウを大いに活用できたのではないだろうか。

自転車の製造に当たっては、人の脚力でいかに早く走れるか、強い力を出せるかが重要になってくる。よりスムーズな力の伝達を考え、自転車という製品を生み出しているわけである。そんなビアンキの自転車製造技術は、自動車の開発、製造に大いに役立ったに違いない。

ビアンキのカタログ
当時のビアンキのカタログ(抜粋)
1902年のカタログである。自転車やオートバイと共に自動車も掲載されている。自転車をそのまま4輪車にしたような車もある。
SITO WEB DI RENPAGより】

ビアンキが最初に力を注いだ自動車は、1903年のビアンキ8HPである。20世紀の初頭、街を走っていたのは主に馬車であり、自動車の姿はまだほとんど見られなかった。そんな時代の自動車である。8馬力で頑丈なフレームに木製のボディを載せたとても高価な乗り物であった。医者の10年分の給料に匹敵する値段がしたと言われている。

また、この車には備品としてレンチや空気入れなどの道具が付き、購入者には1日〜2日の自動車運転教習、自動車修理のための整備士の無料派遣など、さまざまなサービスも付いていた。これは、ビアンキが自転車の販売で培ったノウハウと言えるだろう。

ビアンキ8HP
ビアンキ8HP
1903年製造のビアンキの自動車。ミラノにあるレオナルド・ダ・ヴィンチ記念国立科学技術博物館に展示されている。
Museo della Scienza e della Tecnologia “Leonardo da Vinci”, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】

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ビアンキ20-30CVは、馬車の形を残す車。