FMR TG500

FMR TG500
FMR TG500
FMR TG500 1958年

マイクロカーからスポーツカーへ!

これは、どこかの遊園地の乗り物ではない。レッキとした自動車である。ドイツのFMRというメーカーのTG500という車だ。TG500のTGとはタイガーの略らしいが、タイガーという名には似合わず不思議なスタイルをしている。細長いボディに透明なキャノピーを被せた二人乗りマイクロカーである。

TG500のスタイル
TG500のスタイル
一人の人間が乗れる幅で2人乗り。前から見るとカエルを思わせる顔をしている。最後尾にスペアタイアを付けているのもカワイイ。
TG500実車の写真
TG500実車
ピンクと黒のツートンカラーの実車だ。運転席からは360度見渡せ、運転しやすそうである。
http://www.everyfoto.com, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons】

あのメッサーシュミットが作った車。

FMRとは、メッサーシュミット社の自動車製造部門が独立したメーカーだ。メッサーシュミットと言えば第二次世界大戦で活躍した数々の名機を生んだ航空機メーカーである。メッサーシュミットBF109は、戦時中、イギリスのスピットファイアと空中戦を繰り返したことは有名だ。しかし戦争が終わると、敗戦国ドイツのメッサーシュミット社は、航空機の製造を禁じられてしまう。

そこで、メッサーシュミットは、マイクロカーの製造に乗り出すことになる。まず作ったのが、KR175という3輪マイクロカーである。1953年に生まれたこの車がTG500の元となった。KR175には単気筒2ストロークエンジンが搭載され、ハンドルもバーハンドルであった。キャビンスクーターとも呼ばれており、最初はバイクにキャノピー(風防)を被せたという認識の乗り物であったことがわかる。

KR175の写真
KR175
基本的な形はTG500と同じだが後輪1輪の3輪車。メッサーシュミットが作った最初のタイプである。
nakhon100, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】

全体的なスタイルは、飛行機の操縦席部分を切り取って車を付けたようなイメージだ。メッサーシュミット社は、航空機製造会社としての意地というか誇りを捨てきれなかったのだろうか。俺たちが売る車ならこの形、と強く主張しているようだ。

KR175 1954年の写真
発売当初のKR175
1954年にオランダのハーグで撮影された写真である。車を見つめる人々の姿が面白い。宣伝写真だろうか。
Fotograaf Onbekend / Anefo, CC0, via Wikimedia Commons】

次ページ
ブームに乗ってヒットしたマイクロカー。