歴史人物年齢学

三井高利 五十二歳

現金掛け値なし。

延宝元年(1673年)お江戸日本橋、江戸本町通り。間口十間(18m)、二十間という大店の並ぶその通りに、間口がわずか九尺(2.7m)という小さな店が開店した。三井高利の越後屋である。そこには、大店にはない、一風変わった看板が掛けられていた。
『呉服物現金掛け値なし』
「老舗の店の多い中で、お客さんに来てもらうには、ちょっと安く売らにゃあいかん。売り方を変えれば、もっと安くなるはずじゃ」
当時、江戸本町の呉服商のお客といえば、ほとんどが大名や上級旗本。呉服物の取引は、すべて掛け売りが基本だった。したがって、お金の回転が悪くなるため、品物の値段は二〜三割高くつけていた。

しかし、高利は、これを掛け値なしの現金払いとしたのであった。いわば、正札販売である。しかも、仕入れの方にも手を回し、産地と直接取引きするなどして、売り値をどんどん引き下げた。まさに、現代のディスカウンターのはしりと言える。

世は元禄、大衆消費時代。かくて、この越後屋商法は、大当たり。高利五十二歳の時である。

三井高利(1622〜1694)
伊勢国松坂生まれ。江戸で奉公し、後、故郷松坂へ帰り金融業、米商を営む。子供の協力で江戸に呉服屋を出店し、成功。後に両替店も開く。

←前へ
→次へ
梟